きみへの想いを、エールにのせて
「結城が泳げばいいじゃないか」
卓君が吐き捨てる様にそう言うと、結城君は首を振った。
「いや、お前だ。南高校の水泳部は、前回のラップの一番速い者がアンカーという決まりを作る。ただし、今度は負けない」
結城君は、そうやって皆の士気をあげようとしているに違いない。
そうやって切磋琢磨しなければタイムは伸びていかない。
「わかったよ」
せめて、泳いでいる間は、仲間でいて欲しい。
今の私にはそう願うことしかできなかった。
それから数日後。
卓君の練習が休みのその日、私の足は結城君のスイミングクラブに向かっていた。
卓君が怒るかもしれないと思いながらも、やつれるほど練習を積んでいる結城君のことが心配でたまらない。