きみへの想いを、エールにのせて

同じジャージの彼女は、結城君にしきりになにか話しかけている。
そして結城君も、笑顔でそれに応えていた。


「来るんじゃ、なかった……」


こんな光景見たくなかった。

私と彼の接点はチョコチップクッキーだけ。
きっと彼女は一緒に練習を積んでいる、いわゆる”苦楽を共にした”仲間。

どちらが結城君に近いかと考えれば、一目瞭然。

今まで興奮気味で寒さなんて気にもならなかったのに、突然手足の先が冷えだした。


「やっぱり、見てるだけじゃダメだったよ」


スマホを握りしめたまま思わずつぶやいた。
泉に「ほら見なさい」と言われそうで、ラインもできない。


でも、まだ彼女と決まったわけじゃない。
それに、『よかったらまた別の試合も来て』と言ってくれたのだから、応援するくらいは、許されるよね。

そう自分に言い聞かせて、ひたすら会場が開くのを待った。
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