きみへの想いを、エールにのせて

卓君の深い悲しみが、今なら理解できる。

でも私も……。私も、真夜さんと同じなのかもしれない。
卓君と付き合いながら、心の中で違う人を思っているのだから。


それからも、卓君との関係に大きな進展はなかった。
だけど、少しずつ着実に距離は近づいている。


「お疲れさま」

「サンキュ。帰るぞ」


卓君のスイミングクラブに練習を見に行くのは、もう習慣になった。

結城君のことも気になっていたけれど、真夜さんがいてはなにもできない。


卓君は私を伴って歩くとき、必ず手をつないで離さない。
それが私が離れていくことへの不安を表しているようで、胸が痛かった。


「疲れてるね。平気?」

「泳ぎ込みの時期だからな。試合の前は練習のパターンを変えるから心配するな」
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