きみへの想いを、エールにのせて

結城君と同様、ひどく疲れた顔をしてきた卓君のことも心配だ。

今は思うようなタイムも出ない。
でもこの苦しい時期を乗り越えるとやっと、ベストが出始める。


「それに、茜をインターハイに連れていきたいんだ。だからまだへばる訳にはいかない」


彼は私の手を一層強く握りしめた。


「ありがとう。でも、無理しないで」


結城君のように故障してしまったら……という不安がいつも頭の中にあって消えない。


「大丈夫だ」


彼は突然立ち止まり、私を見つめる。


「俺は結城みたいにはならない」

「えっ……」


そして不意に私を抱き寄せる。


「だから、そばにいてくれ」


まだ乾ききっていない彼の髪から、水滴が零れ落ちてくる。


「……うん」


真夜さんの言葉を聞いてしまった今、私は彼から離れられない。
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