きみへの想いを、エールにのせて

「茜、そういえば数学のテスト、何点だった?」

「え、それ聞いちゃうの?」

「おぉ。聞いちゃう」


それから彼は、少しも私を責めることなく、いつもの調子で話しかけてくれた。
だけど、それがかえって辛かった。


それから卓君は、私にキスを迫るようなことはしなかった。
でも彼は、いつも不安げな顔で私を見つめるようになった。

今までの辛い経験がそうさせているのはわかっている。
だけど私も胸が痛んだ。


そんなある日――。

試合前の最後のミーティング。

各々今の時点での目標タイムを設定し、皆の前で発表する。
そうすることで気持ちを鼓舞させるのが目的。

早めに部室に行くと、すぐに卓君もやってきた。


「卓君、タイム設定した?」

「あぁ、一応な」


彼は100と200のバタフライにエントリーしている。

そしてあとはフリーリレー。
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