きみへの想いを、エールにのせて

彼の声が微かに震えている。


「バカだよ、茜は」


膝の上で握りしめた手に、自分のモノではない涙が一粒こぼれた。


「お前がますます好きになっちまう」


卓君の苦しげな声が耳に届くと、涙が止まらなくなった。

それから卓君は、小栗君と脇田君にミーティングは中止にするとメールした。


もしかしたら水泳部はこれで終わってしまうかもしれない。

事実が明らかになってしまった今、未来が見えなくなった。


「茜」


卓君は私を椅子に座らせると、自分も隣に座り、肩を抱く。

いつだったか、溺れそうになった私を助けてくれた結城君のように。


「なんであんな嘘をついたんだ?」


その質問には答えられない。
自分でもわからないからだ。


「卓君は、どうして?」


だから私は逆に質問をした。すると……。
< 310 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop