きみへの想いを、エールにのせて
「もう俺なんてどうなってもいいから」
彼はそう言うと、私の肩に回していた手を離した。
「よくない。よくないよ」
どうしてなにもかもあきらめてしまうの?
いろんな誤解があなたを苦しめてきたのはわかる。
でも、そのせいで夢まであきらめる必要なんてない。
「茜にはわからないよ。俺はなにも期待されてない。水泳もどうせ平凡なタイムしか残せない。医学部だって、行けたとしても親父みたいに有名大学じゃないだろう。なにもかも中途半端な俺に、誰も期待なんてしてないんだよ!」
胸が痛い。
きっと彼はいつだって必死に頑張ってきたのに、だれもその努力を認めてくれる人がいなかっただけ。
だからそんなふうに、自分を卑下するようになってしまったに違いない。