きみへの想いを、エールにのせて
「なにもされてない。最初はたしかに、水泳部に入る条件で、付き合うように言われたの。でも、なにもひどいことなんてされてない」
その誤解は解きたい。
「それに、卓君、苦しんでるの。今、彼から離れたらダメになっちゃう」
「どういうことだ」
うまく説明できない。
卓君は自分の苦い過去を、きっと他の人には知られたくないはずだ。
私が話すべきことでもない。
黙ってしまった私をしばらくじっと見つめていた彼は……「俺はあきらめない。茜を香川に渡さない」と吐き出すように口にした。
「茜がいたから俺は今泳いでる。アイツに茜が必要なら、俺にだって必要だ」
そして彼は再び私を抱き寄せた。
「インターハイに茜を連れていきたい。いや、絶対に連れていく」
「結城君……」