きみへの想いを、エールにのせて
「まったく。世話が焼ける親父だよ」
彼の瞳が潤んでいる。
そして私は、あふれ出した涙が止まらない。
「また泣く!」
「だって……」
うれしいんだもの。
「真夜のことも、フラれた腹いせから、タイムがどうとかって思いこんじまったけど、他に理由があったのかもしれない」
ふたりの間のことはわからないけれど、彼がそう思えるようになったのは素直にうれしい。
「そっ、か」
こんな私でも少しは役に立てたのかも。
やがて私の家が見えてくると、卓君は突然歩みを止めた。
「どうしたの?」
私が問いかけても彼は真っ直ぐ前を向いたままなにも答えない。
彼の目線をたどると……暗闇の中で人影が動いた。
「結城君……」
部室でのあの一件からふたりがこうして顔を合わせるのはおそらく初めて。