きみへの想いを、エールにのせて

瞬きをして涙を流すと、再び目を見開いてふたりの泳ぐ姿を見つめた。


最後のターンに入ったのは、ほぼ同時。
卓君に追いついた結城君は、ストロークのスピードを上げたように見えた。


だけど、卓君も負けてはいない。より強くキックを打ち始め、ふたりはラストスパート。

もうそのころになると、誰も言葉を発しなかった。
それくらい緊迫した雰囲気だった。

そして……。


「どっちだ?」


雄介君が叫ぶ。
ほぼ同時にゴールしたふたりの差は、ここからでは判別できない。

すると……。


「龍平だ」


結城君が大きなガッツポーズを作ったのだ。
どの試合でも見たことがないほど、大きなガッツポーズを。


「あのふたり、化け物だ」


脇田君がそうつぶやいたのは、彼が計測していたストップウォッチがとんでもないタイムを指していたから。
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