きみへの想いを、エールにのせて

深々と頭を下げる卓君に驚く私たちは、一瞬言葉を失くした。
でも……。


「バカだなぁ。俺たち、初めてリレーを泳いだあの日から、もうずっとそのつもりだよ。今更だぞ、香川」

「脇田……」

「ホント、なに頼まれるかと思ったら、そんなことか。俺達ふたりに追いつけるようにもっと練習積むからさ。一緒にインターハイ行こうぜ」


小栗君がそう言ったとき、一度は止まったはずの涙が、また溢れてきてしまった。


「じゃ、試合で」


ふたりは笑顔で帰っていった。
そして……。


「茜」


最初に私の名前を呼んだのは、卓君。


「負けちまった。約束通り、お前は結城に返す」


そう言われても簡単に「はい」と返事できない。


「香川。俺は勝ったら茜の本音が聞きたいと言ったんだ。どうするかは、茜が決めること」
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