きみへの想いを、エールにのせて

彼に指摘されプールの方を見ると、ガラス越しに彼のコーチと目が合ってしまった。


「逃げるぞ」

「逃げる?」


結城君は私の手首を握り、クラブから飛び出した。


「ねぇ、恋愛禁止なの?」


彼が逃げるなんて言うから、心配になって尋ねると……。


「ううん。でも、女の子をかけて腰を酷使したってバレたら、絶対に叱られるだろ?」

「あっ……腰!」


今更だけど、大丈夫なの?


「大丈夫。死ぬほど筋トレやったから」


彼は走りながらクスクス笑った。

しばらくそのまま走り、彼は小さな公園でやっと止まった。


「はぁはぁ」と息を荒げる私と、すぐに呼吸の整った彼。
これがハードな練習を積んでいる証。


「走りすぎた? 茜、平気?」

「うん」


結城君の笑顔は久しぶり。
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