きみへの想いを、エールにのせて
「そんなの気にしないで」
水泳にすべてをかけてきた彼が、それを失ったときの苦しみは、他の人にはわからないだろう。
「ごめんな、茜」
泣きそうになり声が出せない。
小さく首を振ると、私の背中に回した手に力がこもった。
「茜が水泳部を立ち上げたと知ったとき、俺、すごく複雑で」
泳げないと絶望していた時期なのだから、それも仕方がない。
「でも、泳げないくせに毎日毎日プールに入っている茜を見ていたら、ちょっと挫折したくらいでなにやってるんだろうなって、心が動いたというか……」
あの恥ずかしい姿を本当に毎日見られていたの?
でも、それで彼の気持ちが前に向いたのなら、頑張った甲斐もある。
「茜のために、絶対にインターハイに行くって思った」
「ありがとう、結城君」