きみへの想いを、エールにのせて

最初は卓君の100メートルバタフライ。

去年より一回り大きくなった体で、力強いストロークを続けたけれど……。


「クソッ」


残念ながらインターハイのタイムにコンマ5秒届かず、龍平が悔しがる。


それでも、プールから上がった卓君は、私たちの方に向かって満面の笑みで手を振った。
きっとやりきったのだろう。

この調子なら、来年は確実だ。


「ごめんな。切れなかった」


更衣室の出口まで迎えに行くと、彼はそう口にした。でも……。


「ううん。すごくかっこよかった。お疲れ様」


これまでの彼の苦労を思うと、自然と涙が溢れてきてしまう。


「バカだな。抱きしめたくなるだろ。そんなことしたら結城に殺される」

「あはは」


彼は自分のタオルで私の顔を無造作に拭いた。
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