きみへの想いを、エールにのせて
他の選手が失速しているわけではない。龍平が速いのだ。
それでも簡単には抜かせてくれない。
2位の選手も隣の龍平の追い上げに気がついたからか、一層キックを強く打ち始めた。
そして……。
「どう?」
そのまま3位でのゴール。
でも問題はタイム。
必死に目を凝らして電光掲示板の公式タイムを見つめると……全身を電流が駆け抜けた。
「やった……やった!」
そこには、インターハイの標準タイムを0.8秒上回ったタイムが、表示されていたのだ。
それを見た卓君たち三人は、大きく手をあげハイタッチ。
そして、泳ぎ終わったばかりの龍平は、ゴーグルを外すと、右手を天高くつきあげた。
夢が、叶った……。
周りの人に迷惑にならない様に声をかみ殺して涙を流す。