きみへの想いを、エールにのせて
ゴールにタッチした瞬間、電光掲示板に目をやり、小さなガッツポーズをしてみせた彼に目が釘付けになった。
優勝という大仕事をやってのけたのに控えめな喜び方で、しかもプールから上がると、実に冷静にプールに向かって一礼し、審判への挨拶も忘れない。
その礼儀正しく大人びた姿が、目に焼き付いて離れなくなった。
それから目が勝手に結城君を追いかけるようになった。
「ホントに、頑張るつもり?」
「もちろんだよ。そのために勉強したんだから」
南高校には水泳部がない。
私はここに水泳部を作りたいという希望を持って、進学してきた。
「まったく……」
泉は呆れたような顔をするけれど……。
「でも、その一生懸命さ、嫌いじゃないけどさ」
「うん。ありがと」
なんだかんだ言っても、応援してくれる友達は宝物。
真っ青に晴れ渡った空は、私達の門出を応援してくれているかのよう。
フワッと吹いた風が、ポニーテールにした私の髪を揺らしていく。
「頑張るぞ」
空に向かって決意を新たにすると、新しい生活の第一歩を踏み出した。