きみへの想いを、エールにのせて

唖然として結城君を見つめていると、彼はなかなかプールから上がってこない。

どうした、の?

結城君以外の選手が全員上がってしまった後、彼は自分のコースから上がらず、横まで泳いでいき、なぜか審判に引きずりあげられた。

おかしい。なにか、おかしい。


気がつけば席を立ち、ロッカールームの方に足が向いていた。

イヤな汗が出てしまうのは、彼のことが心配だから。


結城君はなかなか出てこなかった。
もしかして見落としてしまったかもと不安になったけれど、ひたすら待った。

すると……。


「あっ」


ロッカールームの出口に結城君のチームのジャージがチラッと見えて息を呑む。


「結城君……」


そして、両脇をチームメートに抱えられ、目を真っ赤にした結城君の姿が見えた。
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