きみへの想いを、エールにのせて

その時、見回りに来た先生が私たちを見つけて叱るから、それ以上話すことができなくなった。


体育館に入るまでの数分、結城君と肩を並べて歩いたけれど、彼は口を開かなかった。

私も、『ダメかもしれない』とつぶやいたときの彼の困惑した表情が頭に浮かび、なにも聞けなかった。


ダメってことは、もう泳げないということ?

だとしたら、こんなに努力を重ねてきた彼から水泳を奪うなんて、神様は残酷すぎる。


クラスの担任が発表され、あちらこちらで歓声が上がっていたけれど、私はなにも耳に入らなかった。

結城君の苦しげな顔が、どうしても忘れられない。
もし、水泳ができなくなってしまったのだとしたら、なんと声をかけたらいいのだろう。


『優勝できなくてごめん』なんて、悲しい言葉を口にするのは、どれほど辛かったの?
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