きみへの想いを、エールにのせて
「そう、かも。キッパリ辞めますって言えないのは、そういうことなのかな」
彼はどんどん飛び込んでいく今までのライバルたちを見ながら、大きな溜息をつく。
だけど、今の言葉を聞いて、彼はもう一度あのスタート台に立つ気がした。
「今度、またチョコチップクッキー作ろうと思ってるんだけど……」
もちろん、結城君のために。
「いいな。あれ、すごくうまかったよ」
「よかったら、余分に作るよ」
余分にじゃない。
全部あなたに。
「マジで? じゃあ、できたら取りにいくから連絡して?」
「うん」
そうして私達は、ラインのIDを交換した。
「理佐を待たせてるから行くね」
「うん。あのさ、雄介には自分で言うから」
「わかってる。またね」
きっと強いままの結城君が帰ってくる。
そう信じた私は、彼の辛そうな顔を胸の中にしまっておくことにした。