秘密のカレはV(ヴィジュアル)系
「……あれ?かお姉は嬉しくないの?」

「え?そ、そうじゃないけど、まだ噂の段階でしょ?
はっきりそうだと決まったわけじゃないし…」

「そりゃあそうだけど…」

「かお姉は、冷静だなぁ…」

微妙な空気…



そうよね、私はおばさんなんだから、冷静にもなるわよね。



そう言ってやれば良いのかもしれなかった。
でも、そんなこと言う気持ちも失せて…
もうこれ以上、自分を虐めたくなかったから。



「でもさ、二回も見にきてくれてるんじゃ、本当に可能性あるかもな。」

ケインは、夢見がちな瞳をしてそう言った。



「と、思ってたら、実はただのファンだったりして…」

小西君がみんなを笑わせる。



「本当にレコード会社の者だったら、そのうちなんらかの動きがあるだろうな。
それを楽しみに待とうぜ。」

オルガがみんなの話をうまくまとめて…



「あぁ、なんかすっごい気になって来た。
どうしよう…
かおり~…あぁ、俺、早く結婚したい!!」

瑠威の腕に力がこもる。
苦しい…瑠威の力も気持ちも…



私が瑠威と結婚出来るはずなんてないのに…



メジャーデビュー前にそんなスキャンダル…絶対に反対されるに決まってる。
瑠威のご両親だって…
こんな年増で子持ちの女との結婚を、おゆるしになるはずがない。



(……どうしてわからないの?)



無邪気にはしゃぐ瑠威に、なんだか苛々したものを感じた。

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