秘密のカレはV(ヴィジュアル)系
「かおりぃ…」

「もうっ、だめ!」

抱き付いてくる瑠威の身体を押しやった。



「今日のかおり、冷たい…」

「私はいつでも冷たいのよ。」

彼の顔も見ずにそう言って、私は前を向いて歩き続けた。
瑠威は後ろから私の腰に腕を回す。
それでも、無視して歩き続けた。



瑠威が簡単に別れてくれるとは思えない。
どうすれば別れてくれるだろう?
彼はきっと私が余計に苦しくなるような言葉を並べ立ててくるだろう。



年なんて関係ない。
親なんて関係ない。
スキャンダルなんて関係ない。



だけど、いくら瑠威がそう思ったところで、周りは違う。
年のことは私の努力ではどうにも出来ないし、
親御さんとはほぼ縁切り状態だとはいえ、結婚ともなれば勝手にするわけにはいかない。
万一、私とのことで、メジャーデビューがご破算になったら他のメンバーにお詫びのしようがない。



そう、どんなに考えても、私と瑠威が結ばれる可能性なんてない。



瑠威の邪魔だけはしたくない。
だから、私がなんとかしないと…
どんな手を使ってでも、私は瑠威と別れないといけない。



そうすれば、望結も私へのわだかまりをなくしてくれるかもしれない。



時間はかかるかもしれないけど、また望結と母子ふたりで穏やかな生活を始めよう…



瑠威のことは忘れない…忘れられるはずがない。
きっと、彼は、一生、私の心の中に居続けているだろう。
それで良い…
彼の思い出だけで、私はきっと生きられる。



(別れても、瑠威のことを想うだけなら許されるもの…)



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