秘密のカレはV(ヴィジュアル)系




(来た……)



スーツ姿の二人連れに、私は一瞬眩暈を感じた。



「かお姉、あのひと達だよね?」

「そうみたいね。」

「言われてみれば確かにそんな感じするよね!」

小西君が私の耳元で囁く。



来ないでと祈ってた。
どうか、もう二度とライブに姿を現さないで…と。
だけど、二人はやって来た。



(どうか、ただのファンですように…)



我ながら、諦めが悪いけど…
あの二人がただのファンであってほしいと祈ってしまった。



だけど、そうではないことは、なんとなく感じられた。
彼らは、ライブ中によく話し合ったり、メモを取っていた。
普通のファンならそんなことはしない。



ついに来たんだと思った。
私にとっては、死刑の宣告にも似たものが…



メンバーの夢をそんな風に思うのは良くない。
けれど、その気持ちは拭えなかった。



不安でたまらない…



どうか、私のカンがはずれていてほしい。
あのふたりがなんでもない人達であってほしい。



自分の未練がましさにぞっとする。
だけど、そう願わずにはいられなかった。


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