秘密のカレはV(ヴィジュアル)系
side かおり




「とっても素敵なお店ですね。」

「そうでしょう。
味も抜群なんですよ。」

藤堂さんが連れて行ってくれたのは、小ジャレたイタリアンのお店だった。
明るい色調でまとめられた店内にはカンツォーネが流れ、気さくな雰囲気だ。



「北川さん…ぜひ、聞かせて下さい。
どうして僕なんかを誘ってくださったんですか?
彼氏さんとはどうなったんです?」

「ええ…実は…
こんなことを言っては酷い女だと思われるかもしれませんが…その子は私よりずいぶん年下で、元々、ちょっとした気まぐれで付き合っただけなんです。
最初から本気ではなかったんです。」

そう言ったのはちょっとした賭けだった。
もしかすると、その一言で藤堂さんは私のことを嫌いになるかもしれない。
遊びで若い男と付き合うなんて、いやな女だと思われるかもしれない…



「なるほど。それで、その彼のことはもう飽きたってことなんですね。」

「飽きたというか、重くなって来たんです。
それに……若い子はやはり疲れます。
無理して合わせて来ましたが、なんだかもう疲れちゃって…」

「それで、おじさんの僕を誘って下さったってことなんですね。」

「そんな、おじさんだなんて…
そんなことおっしゃったら、私だっておばさんですわ。」

私がそう言うと、藤堂さんは、おかしそうに笑った。
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