秘密のカレはV(ヴィジュアル)系
それから私達は毎日一緒の食事を重ねた。
それだけではない。
ランチもほぼ毎日一緒だし、暇な時間に藤堂さんが店に遊びに来ることもあったし、飲みに行ったり、映画を見に行くこともあった。



それは、お互いのことを知り、付き合ってるということをリアルに感じられるようにするためだって藤堂さんは言っていた…
彼は知れば知るほど、魅力のある人だと思えた。
だけど、それで瑠威のことを忘れられるというものではない。
藤堂さんのことを知っていく度に、瑠威との別れが近付いていることをひしひしと感じ、寂しくてたまらない時もあった。
けれど、そんな気持ちはだれにも打ち明けられない。
家でも、ごく普通の顔をしていなきゃならない。
それが、とても辛かった。



帰りが遅い日ももう何日も続いているというのに、瑠威は「仕事が忙しい」という私の言い訳を少しも疑うことはない。
私が、裏切ることなんて砂粒程も考えちゃいないようだ。
そんなに信頼されてるのかと思うと、胸が痛む…
けれど、ここで揺らぐわけにはいかない。
もうすでに賽は投げられたのだから…後戻りは出来ない。
私は目的を達成するために、本心を偽らなくてはならない。



(どんなに辛くとも…
どんなに悲しくとも…)


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