秘密のカレはV(ヴィジュアル)系





「……どう思った?」

「微妙だな…」

ミーティングの帰り、俺達はまたいつもの店に向かった。



「なんで俺達があんなチャラいバンドにならなきゃなんないんだよ。」

ケインが憤る。



「だよなぁ…まるでアイドルバンドみたいなことをやらされるのはごめんだな。」

クロウはそう言って、たばこの煙をくゆらせた。



「でも、芸能界ってそういうもんらしいよ。
ほら、タータンズだって、本当はもっとゴリゴリのバンドだったらしいけど、ああいう可愛い路線にされてさ。
デビュー当時はそれがすっごくいやだったらしいんだ。
でも、今じゃ、思いっきり好きなことやってるじゃないか。
結局、売れたら何でも好きなこと出来るんだよ。」

小西がいつになく熱く語る。



「……売れたら……な。」

「売れなかったら、髪切っておしゃれな服着せられて、やりたくもない曲やらされて終わりだぜ。」

「またそんなことを言う…」

小西は、困ったような顔で苦笑した。



「小西…それより、おまえ、本当に今の会社やめるつもりなのか?」

「うん、そのつもりだよ。
事務所が決まったら、僕はそこに就職して、今まで通りみんなのマネージメントをしたい。」

「でも、言ってたじゃないか。
事務所に入れたにしても、マネージメントはまず難しいって。
良くても付き人みたいなことからやらされるだろうって。」
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