秘密のカレはV(ヴィジュアル)系
口ではあんなことを言っておきながら、気持ちは焦っていた。



指輪も買いに行かなきゃならないし、式のことも決めなきゃならない。
やることはまだまだいっぱいある。



「かおり、結婚式のことなんだけど…」

「いいわよ、そんなの…私、二度目なんだし。」

「そういうわけにはいかない。
それに、かおりは二度目でも俺は初めてなんだぜ。」

俺は式のことなんて本当はどうでも良かった。
でも、そうでも言わなけりゃ、かおりは遠慮して式をしないって言いそうだったから。



「式なんてどうだって良いじゃない。
お金だってかかるし。
なんなら、メンバーと一緒にいつもの店でやったら…?」

「そうはいかないって。
そりゃあ、そんなに豪華なことは出来ないけど、それなりのことなら出来るから。」

俺にだってある程度の蓄えはある。
来るべきその日のために、式や指輪のお金は少しずつ貯めてたし。



「本当にいいの。
そんなことより、どうだったの?
話し合いはうまくいったの?」

「う~ん…うまくいったってわけじゃないけど…
ま、これからだな。」

「ねぇ…瑠威……
契約まであとどのくらいかかりそう?」

「そうだなぁ…しっかり決めたいから焦るつもりはないけど…
そんなに遠い日じゃないと思う。」

「……そう。」

そう呟いたかおりが、なんだかとても寂しそうだったのが、俺は気にかかった。
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