秘密のカレはV(ヴィジュアル)系
「お、俺は……」

考えがまとまらなくて、うまく言葉が出て来ない。



「瑠威…かお姉のことが本当に好きなら、そんなに簡単に諦めるなよ。
それに…なんか不自然な気がするんだ。
俺から見ても、おまえとかお姉は本当にうまくいってるように見えた。
少なくとも、一年も前から他の誰かと付き合ってたなんて、とても信じられない。
そりゃあ、男は鈍感だってよく言われるけど、おまえだって、そんな異変があったらいくらなんでもわかるんじゃないか?」




確かにクロウの言うことはもっともだと思った。
俺は、かおりと付き合い始める時も、断られても諦める気はさらさらなかった。
何度だって口説こうと思ってたし、一生、ずっと一緒にいる相手だと思ってた…
そうだ…俺はかおりなしじゃ生きていけるはずないじゃないか。
昨日は、なぜ、あんなに簡単に諦めようとしたんだろう?
俺は、かおりを忘れることなんて出来ないのに…



それに、クロウもおかしいと感じてる。
俺達は確かにうまくいってたのに、突然、あんなことを言い出すなんて…



(かおり…何かあったのか?)



「クロウ…ありがとう。
俺、帰るわ。」

「あぁ…うまくやれよ!」

クロウに背中を叩かれた。
派手な音が、俺に気合いを入れてくれるようだった。
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