秘密のカレはV(ヴィジュアル)系




「瑠威……」

「ただいま。
あ…昨夜はクロウん家に泊めてもらったんだ。」

「……そう。」

何気ない会話が却ってよそよそしい。



(かおり……)

かおりの目は真っ赤だった…きっと、泣いてたんだ。
やっぱり、昨日の話にはなにか裏があるんだと俺は実感した。



「かおり…俺、腹減ってるんだけど…」

「瑠威……昨日話したよね?」

「なにかがっつりしたものが良いな。」

「瑠威…!
……話をはぐらかせないで!」

かおりは赤い目で俺を睨み付ける。



「かおり……」

「やめて!なにするの?」

俺はかおりを無理やり抱き締め、唇を重ねた。
いつもと変わらない柔らかな唇…何度も何度も口づけを交わした慣れきった唇…
かおりは、顔を背けながら、俺の腕を必死に振りほどこうとする。



「やめて!瑠威!
私には好きな人がいるって言ったでしょう!」

かおりは激しく抵抗し、厳しい口調で言い放つ。



「だったら、ここに呼べよ!
今すぐに、そいつを…!」

「ええ、いいわ!」

感情的になったかおりは、どこかに電話をかけ始めた。



< 171 / 204 >

この作品をシェア

pagetop