秘密のカレはV(ヴィジュアル)系
私の目の前で、さらに信じられないことが起こった。
瑠威が私の足元に跪いたのだ。



「かおり…
俺を捨てないでくれ……」

「る、瑠威…何を……」

私の足元で小さくなって、瑠威は彼には似つかわしくないことを口にした。



「俺はおまえがいないと生きていけない…」

そう言った瑠威の背中が泣いていた…
わなわなと震え、いつもの彼とはまるで違って、とても頼りなく見えた。



「や、やめて、瑠威!」

立たせようとしても、瑠威はまるで力の抜けた人形のように、その場にうずくまったままだった。



「俺…かおりがいないとだめなんだ…」

「何言ってるの!
あなたはこれからメジャーデビューするんでしょ!?
メジャーはあなたの夢だったじゃない。
メンバーみんなの夢でしょう!」

「あぁ、そうだ…メジャーデビューは俺の大切な夢だった…
ずっと夢見てた…
だけど、おまえは…それ以上に大切なものだ。
おまえさえいてくれるなら…俺はバンドなんてやめてもいい…!」



「瑠威…!」



私は瑠威の身体を抱き締めていた。
さっきまで必死に止めていた涙が、堰を切ったように流れていた。
瑠威がそこまで私のことを想っててくれたなんて…
こんな私のことを…



何もかも台無し…
でも、もうそんなことすらも考えられなくなっていた。
目の前の瑠威が愛しくてたまらなくて…
瑠威を抱きしめた手を、私はもう放すことが出来ないでいた。
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