秘密のカレはV(ヴィジュアル)系




「じゃあ、気をつけてね。」

「うん、ありがとう…」

ライブが終わり、ライブハウスを出てから、私はさゆみやキラさん達に手を振り別れた。
出待ちするとさすがに瑠威にバレるから、うちはママがうるさいから早く帰らないといけないって言ってある。
でも、今日はこっそり見ていたかったから、私は駅の方へ帰るふりして、建物の物陰に隠れた。
それはもちろん、あの手紙のこと。
まさか、その場で読んだりはしないだろうけど、さゆみがちゃんと瑠威にあの手紙を渡すところをどうしても見届けたかったんだ。
だって、あんなに苦労して書いた手紙だもん。



(早く出て来ないかなぁ…)



建物の陰から、ライブハウスの様子をそっとうかがう。
わくわくしながら、待つことしばし…



(あ!出てきた!)

瑠威とオルガさんが出てきて、そこに女の子達がわっと群がる。
さゆみは一番に瑠威の傍に駆け寄っていた。



(あ!渡した…!!)



何か話しながら、さゆみがプレゼントと手紙を渡した。
やったね!!



あぁ、瑠威はあの手紙を読んでどんな風に思うんだろう?
私の書いた文章にドキッとしたりしてくれるかな??
そんなことを考えると、なんだかすっごく楽しい。
あぁ、頑張って良かったよ!
今までの苦労が報われたような、そんな満ち足りた気分を感じながら、私はそっとその場を離れた。

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