恋は天使の寝息のあとに
水族館についた私たちは、まず入り口でイルカショーとペンギンの餌やりの時間を確認して、それから恭弥が心菜を抱っこして、薄暗く照らされた館内を歩き回った。

水の中で舞い踊る魚たち、ライトアップされた色とりどりのさんご礁。
心菜は瞳を輝かせながら、それらを一心に見つめている。
それを眺める恭弥の表情も満足そうで――

なんだか嬉しい。

ふたりの後ろ姿を見つめながら、私は心が温かくなるのを感じた。


恭弥がいてくれて、本当に良かった。

心菜にも、寂しい想いをさせなくて済む。

恭弥が本当にお父さんだったらよかったのに――

そんなことが頭をよぎって、そりゃないわ、と思わず苦笑してしまう私だった。

今の私と恭弥の関係じゃ、仮面夫婦もいいとこだ。
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