恋は天使の寝息のあとに
十六時を過ぎた頃、玄関のチャイムが鳴った。
――恭弥!?
恭弥が律儀に玄関のチャイムを鳴らして家に上がってきたのは昔の話。
最近ではもうそんな習慣もなくなってしまったから、冷静に考えればこのチャイムが恭弥であるはずはないのだけれど。
それでも期待をしてしまった。
玄関を開けたら彼が「家の鍵持ってくるの忘れた」なんて情けないことを言いながら立っているかもしれない。
そんな強引なストーリーを頭の中で描きながら、私は心菜を抱きかかえて玄関へ走った。
扉を開けるとそこには
「こんにちは」
立っていたのは意外な人物だった。
ええと、何て名前だっけ? 数日前の記憶を頭の中から引っ張り出す。
「えと、里香さん……」
そうだ、恭弥の彼女――違う。元、彼女の里香さん。
前回会ったときとは一転、動きやすそうなパーカー姿。
白く細く、美しい足は、ジーンズの中に隠されていた。
長い髪を肩でひとつに束ねて、心なしかメイクも薄め。ずいぶんとカジュアルな印象だ。
彼女はにっこりと微笑むと
「突然驚かせてごめんね、沙菜ちゃん」
そう言って一歩、玄関の中に足を踏み入れた。
――恭弥!?
恭弥が律儀に玄関のチャイムを鳴らして家に上がってきたのは昔の話。
最近ではもうそんな習慣もなくなってしまったから、冷静に考えればこのチャイムが恭弥であるはずはないのだけれど。
それでも期待をしてしまった。
玄関を開けたら彼が「家の鍵持ってくるの忘れた」なんて情けないことを言いながら立っているかもしれない。
そんな強引なストーリーを頭の中で描きながら、私は心菜を抱きかかえて玄関へ走った。
扉を開けるとそこには
「こんにちは」
立っていたのは意外な人物だった。
ええと、何て名前だっけ? 数日前の記憶を頭の中から引っ張り出す。
「えと、里香さん……」
そうだ、恭弥の彼女――違う。元、彼女の里香さん。
前回会ったときとは一転、動きやすそうなパーカー姿。
白く細く、美しい足は、ジーンズの中に隠されていた。
長い髪を肩でひとつに束ねて、心なしかメイクも薄め。ずいぶんとカジュアルな印象だ。
彼女はにっこりと微笑むと
「突然驚かせてごめんね、沙菜ちゃん」
そう言って一歩、玄関の中に足を踏み入れた。