恋は天使の寝息のあとに
水族館を1周して、イルカのショーを見学したあと、併設されたレストランでご飯を食べた。
慌ただしく過ぎる時間。あっという間に影が落ち、空を薄闇が覆う。

いつも以上に大はしゃぎをした心菜は、よっぽど疲れたのか、車に戻りチャイルドシートに座った途端に寝息を立て始めた。

帰り道の車内、再び沈黙の時間が訪れる。

心地の良い揺れと、規則的に通り過ぎる窓の外のネオンと。
平日の仕事の疲れが取れていない私は、気がつくと助手席でうとうとしてしまっていた。

一瞬意識が遠のいて、いけない、と思い頭を振る。
運転してもらっているのに寝てしまうのは失礼だ。

そんな私に気がついたのか
「寝てれば」
ぶっきら棒な声が運転席から飛んできた。

「ん。平気」
私が横を見ると、窓枠に肘を乗せながら、慣れた手つきで片手運転する恭弥。

「疲れてんだろ?」
そう言いながら、ハンドルを切る。

ひょっとして、気を使ってくれている?
珍しいな、と思いながら、ぼんやりと彼を眺めた。

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