恋は天使の寝息のあとに
「大丈夫。これくらい。体力はあるほうだもん」
もちろん、本当は疲れているけれど、弱音を吐くわけにはいかない。
私は決して強いママではないけれど、そうありたいとは思っている。
『疲れた』と一度口に出してしまったら、もう立てない気がした。
私の言葉に恭弥は視線のひとつも動かさぬまま、ただ「ふうん」と軽く頷いた。
気を使ってくれた割に大して興味はないらしい。
信号が赤に変わり、ゆっくりと車が停止した。
まだ両親が生きてた頃、家族全員で車に乗ったことがあったが、そのときの彼の運転は荒く、アクセルとブレーキを踏むたびに冷や冷やさせられた。
心菜を乗せてからは一転、安全運転を心がけているらしく、止まるときも進むときも、振動に身体が揺らされることはない。
薄暗い車内。
信号待ちの間、軽くハンドルに手をかけて遠くを見つめる彼はどこか気だるそうで。
少しだけ開いた唇は艶っぽく、顔にかかる長い髪と、その隙間から覗く切れ長の瞳が大人の色気を醸し出していた。
こうしていれば格好いいのだけれど。
心菜の前でデレデレしている姿を散々見せられている私は、そんなんじゃごまかされない。
やがて
「なあ」
恭弥が思い出したかのように呟く。
「育児と仕事の両立、しんどい?」
私は目を見張った。
恭弥が私に話題を振るなんて。質問をするなんて。
どういう風の吹き回しだろうか。
珍しい日もあるものだ。
もちろん、本当は疲れているけれど、弱音を吐くわけにはいかない。
私は決して強いママではないけれど、そうありたいとは思っている。
『疲れた』と一度口に出してしまったら、もう立てない気がした。
私の言葉に恭弥は視線のひとつも動かさぬまま、ただ「ふうん」と軽く頷いた。
気を使ってくれた割に大して興味はないらしい。
信号が赤に変わり、ゆっくりと車が停止した。
まだ両親が生きてた頃、家族全員で車に乗ったことがあったが、そのときの彼の運転は荒く、アクセルとブレーキを踏むたびに冷や冷やさせられた。
心菜を乗せてからは一転、安全運転を心がけているらしく、止まるときも進むときも、振動に身体が揺らされることはない。
薄暗い車内。
信号待ちの間、軽くハンドルに手をかけて遠くを見つめる彼はどこか気だるそうで。
少しだけ開いた唇は艶っぽく、顔にかかる長い髪と、その隙間から覗く切れ長の瞳が大人の色気を醸し出していた。
こうしていれば格好いいのだけれど。
心菜の前でデレデレしている姿を散々見せられている私は、そんなんじゃごまかされない。
やがて
「なあ」
恭弥が思い出したかのように呟く。
「育児と仕事の両立、しんどい?」
私は目を見張った。
恭弥が私に話題を振るなんて。質問をするなんて。
どういう風の吹き回しだろうか。
珍しい日もあるものだ。