恋は天使の寝息のあとに
しかし、そう上手く事は運ばない。
「沙菜、心菜が泣き止まないんだ。一体どうしたんだろう」
つい先ほどまで笑顔で遊んでいた心菜に大泣きされて、たまらなくなった翔が私に助けを求めてきた。
「眠たくてグズっているだけだと思うよ」
「困ったな、こんなに泣いていたら眠れないだろうに。何か泣き止ませる方法はないのかな」
「抱っこしてたら眠ってくれるかも。あとは、泣きつかれて寝てくれるのを待つしかないよ」
「……やってみるよ」
翔は心菜を抱きかかえて、ゆりかごのごとくユラユラと身体を揺らしてみる。
しかし、心菜はけたたましい泣き声をあげたまま。泣き止む様子はない。
普段は温厚な翔も、これには眉間を神経質に歪ませて、参ったという表情を浮かべている。
気持ちは理解できる。
私だって心菜が産まれた当初は、あまりの泣き止まなさに気が狂いそうになったものだ。
どうして泣いているのかわからない。
どうしたら泣き止んでくれるのかもわからない。
けたたましい泣き声が部屋の中にぐわんぐわん反響して、超音波のごとくキンキンと神経に突き刺さる。
可哀想だし、きっと近所迷惑だろうし、責められているような罪悪感とか、こんなに一生懸命やってるのにどうして上手くいかないんだという無力感とか、いろんな感情が重なって心を蝕んでいく。
特に翔の場合、突然これがあなたの子ですよ、なんて縁もゆかりもない子どもを渡されて、こんなに激しく泣かれたら、平静でいられる方がおかしいと思う。
単に『子どもが泣いている』そんな当たり前のことに過ぎないのだが、この苦しみは経験した人にしか分からないだろう。
おそらくきっかけは、こんなような、日常の何気ない出来事だったと思う。
私と心菜と翔の完璧過ぎる幸せな生活は
一ヶ月経つ頃には、次第にほころびが見え始めた。
「沙菜、心菜が泣き止まないんだ。一体どうしたんだろう」
つい先ほどまで笑顔で遊んでいた心菜に大泣きされて、たまらなくなった翔が私に助けを求めてきた。
「眠たくてグズっているだけだと思うよ」
「困ったな、こんなに泣いていたら眠れないだろうに。何か泣き止ませる方法はないのかな」
「抱っこしてたら眠ってくれるかも。あとは、泣きつかれて寝てくれるのを待つしかないよ」
「……やってみるよ」
翔は心菜を抱きかかえて、ゆりかごのごとくユラユラと身体を揺らしてみる。
しかし、心菜はけたたましい泣き声をあげたまま。泣き止む様子はない。
普段は温厚な翔も、これには眉間を神経質に歪ませて、参ったという表情を浮かべている。
気持ちは理解できる。
私だって心菜が産まれた当初は、あまりの泣き止まなさに気が狂いそうになったものだ。
どうして泣いているのかわからない。
どうしたら泣き止んでくれるのかもわからない。
けたたましい泣き声が部屋の中にぐわんぐわん反響して、超音波のごとくキンキンと神経に突き刺さる。
可哀想だし、きっと近所迷惑だろうし、責められているような罪悪感とか、こんなに一生懸命やってるのにどうして上手くいかないんだという無力感とか、いろんな感情が重なって心を蝕んでいく。
特に翔の場合、突然これがあなたの子ですよ、なんて縁もゆかりもない子どもを渡されて、こんなに激しく泣かれたら、平静でいられる方がおかしいと思う。
単に『子どもが泣いている』そんな当たり前のことに過ぎないのだが、この苦しみは経験した人にしか分からないだろう。
おそらくきっかけは、こんなような、日常の何気ない出来事だったと思う。
私と心菜と翔の完璧過ぎる幸せな生活は
一ヶ月経つ頃には、次第にほころびが見え始めた。