恋は天使の寝息のあとに
「しんどいかって言われれば、しんどいけど」

そりゃあ、育児だって仕事だって、どちらかひとつでも十分大変なのに、全てひとりでこなさなければならない。
体力は限界寸前だし、精神的なプレッシャーもある。

それでも
子どもは可愛いし、いてくれてよかったと思っている。
心菜の笑顔が、疲れを癒してくれる。

それに
今は恭弥だって、そばにいる。

「私、今、幸せだから大丈夫。もう少し頑張れそう」

彼と同じように真正面を見据えながら、私は笑顔で答えた。


信号が青に変わった。
恭弥はゆっくりとアクセルを踏み込む。
が、またすぐに次の信号に引っかかってしまう。
これだから下道はめんどくさい。帰るまでもう少し時間がかかりそうだ。

信号待ちに苛々しているのだろうか? 恭弥は口元に手の甲を添えながら、何かを考えている様子だった。
長く覆いかぶさった前髪で、その瞳の色はうかがえない。

「なあ、もし――」
彼がぼそりと呟いた。

「いつか、しんどくなって、どうしようもなくなったら――」
再びゆっくりとアクセルを踏み込みながら、彼は言った。

「俺と、結婚する?」
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