恋は天使の寝息のあとに
今日は心菜の保育園の運動会。
心菜にとって、初めての運動会でもある。

見に来る? と、試しに恭弥を誘ってみたら、彼は迷わず頷いた。
心菜の晴れ姿を写真に収める気満々らしい。
ビデオカメラを新調しようかなんて言い出したから、携帯端末のムービー機能で十分だと止めておいた。


心菜を保育園のクラスに預けたあと、私は身一つで校庭へと向かった。
校庭はすでに場所取りをしている保護者たちでぎゅうぎゅう詰めになっている。
トラックを囲んでロープが張られ、そのロープに沿って円周上に人だかりが出来ていた。

恭弥はもう来ているのだろうか。
この人混みで彼を見つけ出すのはなかなかに難しい。

私は恭弥と連絡を取るため、バッグの中をがさごそとあさり携帯端末を探した。
が、

……ない!

サーっと背筋が冷たくなる。
そうだ。さっき机の上に置いて、そのまま忘れてきちゃったんだ。

困ったな、どうしよう。恭弥と連絡が取れなくなってしまった。
家に取りに帰る? ううん、そんな時間はない。

仕方なく私は人混みを掻き分けながら校庭の周囲をぐるっと歩いて、恭弥の姿を探した。

恭弥は背が高いから目立つかと思いきや、観覧する父兄の数が予想以上に多く、パッと見で探し当てるのは無理だった。
背の高い男性をひとりひとり確認しながら歩くも、なかなか見つからない。

恭弥、どこにいるんだろう。
ひょっとして、まだ着いてないのかな?
あと五分で開会式が始まっちゃう!
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