恋は天使の寝息のあとに
私は一瞬悩んだあと、恭弥の腕に手を回し、彼の身体を引っ張った。

「せっかくだから、一緒に来て」
「え? や、だけど俺は――」

本当の父親じゃない。そう言いかけたのかも知れない。
だいじょぶだから、と言って私は躊躇う恭弥の身体を引きずって集合場所に向かった。


校庭の真ん中にひな壇が用意されていた。
私が心菜を抱っこして前の列に立ち、その後ろを守るように、恭弥が位置する。

恭弥は部外者であることに後ろめたさを感じているのか、ほんの少し、そわそわとしている。

大丈夫だよ。周りから見たら、本当のお父さんにしか見えないんだから。

――そう見られることが嬉しかった。
それだけでたいそう幸せな家庭のように見えている気がする。

私の単なる自己満足、見栄を張りたいだけかもしれない。

でも、心菜が大きくなったときにこの写真を見たら、きっと喜んでくれると思う。

そして、私自身も。
恭弥と一緒に並べるのが、なんだか嬉しかった。

失った『夫婦』という関係が恋しくなってしまったのか
はたまた、今日の恭弥があまりに素敵だったからなのか
理由なんて自分でもよくわからない。
それでも、一瞬だけでも、恭弥と夫婦になれたことに、私は満足感を抱いていた。
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