恋は天使の寝息のあとに
由利亜さんは「そうだ!」と思い出したかのように手を叩いて、再び表情を明るくさせた。
「友達からお下がりの服たくさんもらったの! 女の子のもあるんだけど、心菜ちゃん要る?」
由利亜さんの言葉に、私は「わっ!」と胸の前で手を合わせる。
「ありがとう! 助かるー!」
我が家は家計が厳しい。なにしろ働き手が私一人しかいないのだから。
両親の遺産もあるにはあるけれど、それは心菜の学費に当てたいし――
――ということで、貰えるものは是非とも貰っておきたい。
由利亜さんは、よし、と頷いて小さなガッツポーズを作った。
「明日、家に持っていくよ! 昼頃、家にいる?」
「えっと、明日の予定は……」
いつもの日曜日なら、昼前には恭弥がうちにやってきて、一緒にお昼を食べに外へ出かけるのだけれど。
その時間でいいですか? というお伺いの眼差しを恭弥へ送る。
すると恭弥は取ってつけたかのように呟いた。
「……俺、明日、用事があるから家行かないわ」
「えっ、そうなの?」
「ああ」
それがあまりに珍しいことだったから、私は恭弥の顔をじっと見つめた。
もちろん、毎週必ず来いだなんて言うつもりはない。
それでも今まで欠かさず私たちのところへ来てくれていたから、どこか違和感を覚える。
ああ、そういえば、一度だけ来なかった日があったっけ。
そのときは確か『確定申告で忙しいから』なんて言っていたけれど――
「……用事って何?」
「ん。野暮用」
恭弥は目線を逸らして言葉を濁した。
余計に私は首を傾げる。
ひょっとして、私たちに気を使って身を引いてくれているのだろうか。
まぁ恭弥のことだから、身を引いたというよりは、面倒くさい匂いを感じ取って避けただけのような気がするけれど。
「友達からお下がりの服たくさんもらったの! 女の子のもあるんだけど、心菜ちゃん要る?」
由利亜さんの言葉に、私は「わっ!」と胸の前で手を合わせる。
「ありがとう! 助かるー!」
我が家は家計が厳しい。なにしろ働き手が私一人しかいないのだから。
両親の遺産もあるにはあるけれど、それは心菜の学費に当てたいし――
――ということで、貰えるものは是非とも貰っておきたい。
由利亜さんは、よし、と頷いて小さなガッツポーズを作った。
「明日、家に持っていくよ! 昼頃、家にいる?」
「えっと、明日の予定は……」
いつもの日曜日なら、昼前には恭弥がうちにやってきて、一緒にお昼を食べに外へ出かけるのだけれど。
その時間でいいですか? というお伺いの眼差しを恭弥へ送る。
すると恭弥は取ってつけたかのように呟いた。
「……俺、明日、用事があるから家行かないわ」
「えっ、そうなの?」
「ああ」
それがあまりに珍しいことだったから、私は恭弥の顔をじっと見つめた。
もちろん、毎週必ず来いだなんて言うつもりはない。
それでも今まで欠かさず私たちのところへ来てくれていたから、どこか違和感を覚える。
ああ、そういえば、一度だけ来なかった日があったっけ。
そのときは確か『確定申告で忙しいから』なんて言っていたけれど――
「……用事って何?」
「ん。野暮用」
恭弥は目線を逸らして言葉を濁した。
余計に私は首を傾げる。
ひょっとして、私たちに気を使って身を引いてくれているのだろうか。
まぁ恭弥のことだから、身を引いたというよりは、面倒くさい匂いを感じ取って避けただけのような気がするけれど。