恋は天使の寝息のあとに
「別に、あれは、ただの知り合い」

恭弥がつっけんどんに答えた。

嘘だ。どこをどう見ても恋人同士だった。
どうしてそんな嘘をつくのか。

「ただの知り合いなのに、腕組んで歩くんだ」

「……人懐こいやつなんだよ」

「ただの知り合いを家に連れ込むの?」

「……別に、何もしてねぇよ」

渋い顔をする恭弥と不機嫌な私の間に、冷たい風がさあっと流れ込む。


やっぱり何も答えてくれないじゃないか。
なんでも聞いていいって言ったのに。


再び涙が零れそうになって、私は手の甲で瞳を拭った。

それを見て観念したのか、恭弥が重たい口を開く。

「……元カノだよ。もう付き合ってない」

「あんなにいちゃいちゃしてたのに!?」

「いちゃいちゃなんてしてねぇよ」

「してたよ!」

「だぁぁぁ! お前はっ! なんでそんなに突っかかってくるんだよ!」

しつこく追求する私に、いい加減、恭弥が声を荒げた。
私はびくりと肩を震わせる。
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