恋は天使の寝息のあとに
家に着いた私たちは、子どもたちと一緒に帰りを待っていてくれた由利亜さんへ念入りにお礼を伝えた。
私と恭弥の姿を見て、何かが変わったと感じたのだろう、「リフレッシュできたみたいね」彼女はにっこりと微笑んだ。
恭弥が由利亜さんと利哉くんを車で家まで送り届けてくれている間に、心菜はすっかりお眠になってしまい、カーペットの上でころころしだした。
寝息を立て始めたころ、一仕事終えた恭弥が車の鍵をチャラチャラいわせながら戻ってきた。
心菜たちが食べた夕食の余りものに冷凍食品のおかずをプラスして、私と恭弥二人分の簡単な夕食を用意する。
台所の脇のダイニングテーブルに並べられた食事を見て、恭弥がサンキューと言いながら席についた。
恭弥が箸を動かしだしたのを確認して、自分も席に着き、いただきます、と手を合わせる。
なんだかんだ言って最後まで付き合ってくれた恭弥に、一応お礼を言うべきだろう。
「……今日は、付き合ってくれてありがとう」
私が改まって伝えると、恭弥はちらりとこちらを見やって、またすぐに視線を目の前の料理へと戻した。
「少しは、気が晴れたのか?」
白いご飯を口に運びながら恭弥が問いかける。
私が頷いたのを確認すると、ただ一言だけ呟いた。
「俺を頼れ」
私は目をぱちぱちと瞬きながら、黙々と食事を続ける恭弥を見る。
しばらく何も言えないでいると、恭弥は上目遣いで私を覗き込んだ。