恋は天使の寝息のあとに
父親がいない心菜にとって、恭弥は親代わりともいえる。
当の恭弥も、出産から今に至るまで心菜の成長を間近で見てきて、その存在はもはや実の娘と変わらないらしい。

両親の遺してくれた実家を受け継いで住む私と心菜。
恭弥は未だ一人暮らしをしているにも関わらず、週末には欠かさず実家に帰ってきて心菜の面倒を見てくれる。
そんな生活がもう一年半近く続いている。


心菜へ惜しみない愛情を注ぐ彼。
しかし、私に対する態度は冷たかった。

私のことには驚くほど無関心。
話しかけても不機嫌な表情を返すのみ。言葉のキャッチボールは望めない。
心を開いていないのか、自分のことも全く話してはくれない。

あまりにもうざったそうにあしらわれるから、私のことが嫌いなんじゃないかと思えてくる。

もう少し、もう少しだけ
仮にも妹なのだから、こんなに近くにいるのだから
興味を持ってくれてもいいんじゃないのかなぁ……なんて。

そんな想いを抱きながら、言葉にはできずにいた。
< 8 / 205 >

この作品をシェア

pagetop