恋は天使の寝息のあとに
「もう一人で抱え込むとか、なしな。
なんでもいいから、もっと俺を頼れ。
じゃないと、俺がお前のそばにいる意味がないだろ」

恭弥は低い声で拗ねるように呟いてそっぽを向く。
不機嫌そうにむくれている姿は、なんだか照れているようにも見える。

「だいたい、俺のことなんかで悩んでんじゃねぇ。
いつでも目の前にいるんだから言えよ。なんでも」

もう恭弥はこちらに目を向けてはくれなかった。
呆れたように吐き捨ててご飯を口の中へかきこんだあと、空になった茶碗を無言で差し出してきた。
『おかわり』の意。


私は彼の茶碗を受け取りながら、無愛想な彼の優しい言葉を心の中で反芻した。

頼ってもいいと言う。なんでも言っていいと言う。
それが私のそばにいる意味だと言う。
彼の中では、少なからず、私を助けようという意思がある。

どうしてあんなにぶっきらぼうな言い方しかしてくれないんだろう。
わかりにくいよ、バカ恭弥。
あんなに甘い言葉なのに、眉間に皺を寄せて言われたら、素直に嬉しいって言えなくなるじゃないか。
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