恋は天使の寝息のあとに
第五章
*** 一年五ヶ月前***



「何やってんだ」

リビングに入ってきた恭弥が、パジャマ姿のままソファに座る私を見て呟いた。

私の膝の上には、産まれてからまだ二週間しか経っていない、お猿さんのような顔をした心菜が安らかな寝息を立てている。

「……動けないんです……」

沈痛な面持ちで答える私に、恭弥がいっそう不思議そうな顔をする。

「心菜が重くて立てないって? 心菜を布団まで運べばいいのか?」

「だめっ! 触っちゃ!」

心菜を抱きかかえようと、私の元にやってきた恭弥に、声をひそめて一喝した。

「やっと今寝てくれたの……起こさないで……ちょっとでも動かしたら、また大泣きしちゃう……」

しーっ! と人差し指を口元に添えながら、私は必死に恭弥を制する。
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