恋は天使の寝息のあとに
***



恭弥と二人で出かけた翌日、心菜が熱を出した。

運動会やお出かけで疲れが溜まっていたのかもしれない。
身体を熱くして、はぁはぁと呼吸を荒げる心菜を小児科へ連れて行った。
医師によれば、ただの風邪だという。しっかりと安静にしてくださいとのこと。


子どもだから仕方がないけれど、月に一度はドカンと高熱を出し、その度に一週間近く治療に費やすこととなる。
もちろん私は会社を休み、心菜につきっきりで看病するのだが、何の前触れもなく突然一週間も仕事を休むもんだから、会社としてはたまったものではないだろう。

私が仕事を休んだ分、誰かが代わりに残業することになる。
大人だから誰も文句を言わないけれど、心の中ではフザケルナと思っているはずだ。
迷惑をかけるこっちだって、罪悪感に苛まれているのだけれど、どんなに私が申し訳なく感じたからって現状がどうにかなるわけでもなく。
私としては、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんとただひたすら平謝りするしかないのだった。


『なんでも言え』という恭弥の言葉を思い出して、心菜が熱を出したと連絡するべきか悩んだが、心配させるのも悪い気がして思い留まった。
心菜のためとあれば飛んできてくれそうだけれど、彼の仕事にまで迷惑がかかってしまう。

なんでもかんでも頼っていたんじゃ、それは単なる甘えでしかなく。
せめて自分でできる部分は自分でカタをつけたい。 

大病ではなく、ただの風邪だもの。次にあったときに事後報告すればいいだろう。
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