恋は天使の寝息のあとに

今日のお出かけは恭弥の独断で水族館へ決まった。

心菜は水族館が大好きで、連れて行くのはもう三回目だ。
目の前を泳ぐお魚に興味津々。
あまりにも良い反応をするもんだから、高いお金をかけて連れていく甲斐があるというものだ。

宣言どおり、私の希望は一ミリも考慮されていない。
まぁ、気分転換にはなるからいいのだけれど。


恭弥の借りているマンションには駐車場がないから――正しくは、駐車場はあるが月々の値段が高すぎて払う気になれないから――実家の庭先を貸してくれと言って、自ら購入した四人乗りの小型車を置いている。
恭弥はそこにチャイルドシートを付けてくれた。
使っていいと言ってくれたけれど、あいにく私は免許を持っていないので、その車は恭弥専用のままだ。

心菜をシートに座らせたあと、ベビーカーをトランクに入れて、おむつや着替えの入ったバッグを後部座席に詰め込んだ。
BGMはもちろん、心菜用の童謡＆アニソンBESTHIT。

一連の手馴れた仕草に完全にお父さんを感じてしまって、私はため息をついた。

恭弥は独身だ。
にも関わらず、こんなにも心と時間を心菜に費やしていて大丈夫なのだろうか。こっちが心配になってくる。

自分の結婚とか、子どもとか、ちゃんと考えてる？
心菜のせいで、婚期逃しちゃうよ？