消えた帽子の行方
帽子を深くかぶっていて顔はよく見えないけれど、おそらく小学校低学年くらいだろう


『馬鹿なことくらい知ってるよ』


『…え?』


きょとんとした少年から目をそらして、言った


するとずっと抑えていたものが溢れだした


『馬鹿だから、人のこと考える余裕なかったんだ』


『え、おいお前なに言って』


青年までもが慌てだしたが、私はお構いなしだ




『馬鹿だから、生きれなかったんだ…』


知らず知らずのうちに涙が一粒、二粒流れ出した



『ちょ、ちょっと落ち着けって。な?』


『涼兄場所変えた方がいいんじゃない?』


『そ、そうだな。一旦家連れて帰るか。お前、立てるか?』



青年は少し戸惑いながら私に手を差し伸べた


しかし私は


『…ひっく…もう大丈夫ですから』


これ以上迷惑はかけられない


自分でさえうっとおしい私なんか放っておいてほしい


そんな気持ちで首を横に振った




すると、さっきまで青年の後ろにいた少年が私の傍までやってきて



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