消えた帽子の行方
『ごめんなさい、悪気はなかったんだ』
しゅんとして私に向かって謝ってきた
『お姉ちゃん。心配しなくていいから。涼兄はすっごく優しいから。何も気にしなくていいんだよ』
相変わらず顔はよく見えないが、声音から本当に私を気遣ってくれているのだと分かる
勘違いかもしれないけれど
『…別に変なことしようってわけじゃない。でもさ、話を聞こうにもここじゃあんまりだろ?』
青年もそう言って寄ってきて、その場にしゃがんだ
『な?』
そして今度は二人で手を差し伸べてきた
大きな手と、小さな手を…
『…はい』
私は2つの手を取った