消えた帽子の行方
青年と少年
『で、何があったんだ?』
目の前では淹れたての紅茶の湯気がたっている
今私は先程の青年─もとい吉井涼太さんの自宅にいる
やはり彼は私と同い年で、近くの商業高校に通っているらしい
しかし私とは違い、アルバイトをしながら一人暮らしをしている
その証拠に玄関には彼の靴以外見当たらなかった
『…』
『…まあ、焦らなくてもいいけどさ。落ち着いてからで構わないから』
『…はい』
『お姉ちゃん紅茶でも飲みなよ。お菓子もあるからさ』
そう言って自分のカバンの中から板チョコを取り出した。
─少年は近所(と言っても片道20分はかかるが)の小学校の3年生らしい
名前は緑川カオルくん
吉井さん曰く『馨』と書くらしいが、本人は難しいからまだ書けないらしい
こうやって心配してくれるあたり、まだまだ純粋な男の子だなぁと思う
実は私を最初に見つけてくれたのはカオルくんだったそうだ
そこにたまたま通りかかった吉井さんが来て私は目を覚ました、ということだ