消えた帽子の行方
『飛び下りた、と』
『…はい』
吉井さんはうーんと唸りながら
『あそこから飛び下りて助かった奴なんか聞いたことないけどなぁ…』
『だから!お姉ちゃんは未来から』
『あーはいはい分かってるって』
カオルくんを押さえながら吉井さんは頭をかかえ
『今はそれしか考えられねえよな』
はあ…とため息をついた
『で、どうするんだ?』
『え?』
いきなり私に話を振るから驚いてしまった
『未来への帰り道、わかんの?』
『…分かってたら帰ってます』
『…知り合いは?』
『ここがどこかもわからないので』
彼はだよなぁ…と言ってまた唸りだした
しばらくしてカオルくんがとんでもないことを言った
『帰れるまでここに住めばいいんじゃないの?』